こばるとライダー日記

Soliloquy of a man riding a motorcycle and a convertible

デニムとバイクのファッションアイコン世代間格差

しばらく前から、若者は「ジーパン」(ジーンズ、デニムともいいます)を穿かなくなっているそうです。その理由は「デニムは年寄りくさいから」だそうです。テレビのインタビューで若者が言ってました。

 

ジーパンは、若者のファッションにおける中心的なアイテムだと認識していた私は、その番組を見て、少しばかり驚きました。

 

しかし、あらためて考えてみると、ジーパンをファッションとして初めて取り入れた世代は団塊の世代。1960年代のヒッピーや学園紛争という時代でしょうか。その時代に若者だった世代は70歳以上になっている高齢者です。そして普段着でジーパンを穿いています。

 

そして、ジーパンがデニムといわれるようになり、海外のセレブの中でデニムが流行し、空前のブームになったのは何年前だったでしょうか。20年くらい前でしょうか。当時若者だった世代は、競って高価なデニムを買っていました。その世代も今や中高年です。

 

おじいちゃん、おばあちゃん、おっちゃん、おばちゃんがよく穿いているデニムを、お洒落に敏感な若者が見たら、年寄りくさいなあと思うのは当たり前ですよね。敬遠されてしまうのも仕方ありませんね。デニムの単価も下がったこともあり、業界の売り上げは下がっているようです。

 

話はかわってバイクのことを。

 

今年新発売になったホンダのGB350というバイクは、お洒落で値段も安くて、いいバイクだと思いました。若い人でも買えるいいバイクが出たなあ、私も若かったらこれが欲しくなっただろうな、と思いました。開発も若手で行ったとかどこかで読みました。

 

現在の私にとっての欲しいバイクではありませんが、若者に売れそうなGB350には好感を持ちます。バイクの販売台数が減少していることに寂しさを感じていたからです。こういう商品はヒットしてほしい、若い人に買ってほしいな、と思いながらGB350のバイク掲示板を読んでいました。

 

すると、「せっかく欲しいバイクが出たのに、ダサいオッサンが得意げにYouTubeで商品紹介をしているのをみて、買う気が無くなった。」という若い人の書き込みを目にしました。書き込み主はよほどムカついていたのか、しつこく何度も書き込んで、リンクも貼っていたので、釣られてその動画をチェックしてしまいました。

 

みると確かにそのYouTubeのオジサンは、若者に水をさしているだろうな、と思えました。清潔感がないヘアスタイルと、お腹が出ているだらしない体型のオジサンが、ドヤ顔でバイクの解説をしていました。申し訳ないのですが、ビジュアル的に違和感があります。お洒落なバイクもダサく見え、バイクのイメージダウンの動画です。

 

でも「買う気が無くなった」という書き込みを目にしていなければ、私はその動画の主がカッコ悪いと感じることはなかったでしょう。だって、そんなオジサンライダーなんて、道の駅でよく見かけますし、オジサンなんてそんなものです。

 

むしろお腹の出たオジサンライダーなんて、バイクに乗っている人の主流かもしれません。バイクは乗っている人の全身が見えるので、カッコ悪い体型がよくわかるのです。だらしない体型にコンプレックスを持っている人が、カッコつけようとバイクに乗っているんじゃないかと思うくらい。

 

でも「ダサいオッサン動画で買う気なくなった!」とか言われてみると、確かに若い人ががっかりするのも仕方がないと思います。せっかくメーカーがお洒落なバイクを出したのに、オジサンがYouTubeでイメージダウンさせてしまっているのです。

 

デニムと同じく、バイクが若者のアイテムであったのは、もう遠い昔のことです。今や高価な大型二輪を購入できるのは経済的に余裕のあるオジサンだけ。マーケティングデータからすると、バイク所有者の中心年齢が50代、60代。もはやバイクはオジサンの文化だといえるでしょう。

 

とはいうものの、バイクはオジサンの文化だ!若者は乗るな!というオジサンはいません。バイクに乗っているオジサン達だって、若者だった時から乗っていますし、やはりバイクには「青春」とか「社会への反抗」とか、爽やかで青臭いイメージの方が似つかわしいとオジサンも思っているからです。オジサンも乗っていて若々しい気分に戻りたいですから、バイクにヤングなイメージ、若き日々へのノスタルジーがあったほうが良いのです。

 

バイク業界にとっても、若い人にもどんどんバイクに乗ってほしいし、若者にバイクへの憧れを持ってもらいたいので、オジサンだけを相手に商売して、若い人に敬遠されたくありません。若者に見向きもされないと将来が真っ暗です。

 

だから、バイクに関わっている人みんなにとって、バイクが年寄りくさくなることなんて誰も望んでいないと思います。

 

と、そうした視点からYouTubeの動画について考えてみます。結論として、オジサンライダーは、若い人の購買意欲を失わせないように配慮して、動画を作成しましょう、という話です。

 

バイクに乗っている多くのライダーは、自分のことをカッコいいと思っていると思います。それは何故でしょう。バイク自体がカッコいいのもあるでしょうけど、映画や広告によるイメージも大きいはずです。

 

カッコいい俳優がバイクに乗って派手なアクションを演じたり、美女のモデルによるバイクの広告写真など、たくさんの演出されたイメージの積み重ねが、バイクという存在をカッコよくさせているのではないでしょうか。

 

残念ながら、ダサいオジサンはバイクのイメージをあげることは出来ません。ダサいオジサンがバイクの宣伝をしても、好感度が低下してしまうのが悲しい現実なのです。オジサンの動画は、ブランドイメージの破壊活動、ブランドテロリスト、ということにもなりかねないのです。

 

YouTubeやSNSがなかった頃は、商品イメージは広告代理店やクリエーターだけが作り上げるものでした。ところが、個人でネットに様々な情報発信が出来るようになると、その独占状態は失われました。メーカーが宣伝費をかけて一生懸命つくりあげている商品イメージは、素人の発信によって一瞬で崩壊されてしまうようになったのです。

 

それくらいYouTubeの動画によるブランドイメージの破壊力というのは、本文の最初の若者の書き込みのように、想像以上のものがあるのです。

 

バイクの知識があって、それを伝えたい、誰かの役にたちたいという気持ちはよいと思います。個人から発信できるSNS文化も否定はしません。

 

ただ、バイクがカッコいい、バイクに乗る俺ってイケてるぜ!と思えるイメージは、バイクに乗るライダーみんなの共有財産であり、それをみんなで守りませんか。ちょっとした工夫で、バイクのイメージを低下させないようしませんか。

 

顔に自信がなければヘルメットを被る、体型に自信がなければ、全身を写さない、ナレーション中心にするなど、いろいろ方法はあります。もし動画に自分自身が出て、アピールしたいならば、恥ずかしくないような体型や清潔感を身につけてからにしましょう。

 

こういうことを言うと、なんだか容姿で人を差別しているかのように思われるかもしれません。でもファッションとはそういうものです。バイクが好きで、バイクに乗っていることをカッコいいと思うのであれば、バイクがファッションアイコンのひとつであるということを忘れてはいけないのではないでしょうか。

 

ということで、私もブログの写真に登場するときは、後ろ姿ばかりになってます。私だって自分の容姿が、バイクのイメージアップになるなんて、そんな自信はありませんよ。

 

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