こばるとライダー日記

Soliloquy of a man riding a motorcycle and a convertible

ロードスター談(4)オープンカーで聴く音楽

休みの日にバイクに乗るか、車に乗るかは、その日の体調や走行距離、天気、写真の機材がいるかいらないか、などで決めます。天気予報を見て、雨が降りそうだったら車です。

 

バイクのツーリングより車のドライブがいいところは、運転しながらドリンクを飲んだり、音楽を聴いたりできるところですね。バイクもヘルメットにヘッドセットをつければ、携帯からBluetooth経由で音楽を聴けますが、エンジン音を楽しみたいので音楽はほとんど聴きません。

 

以前乗っていたロードスターNCは、ソフトトップでしたので、あまり音楽が楽しめる環境ではありませんでした。トップを閉めていても外の音が聞こえてうるさかったです。特に高速やトンネルの中、雨が降っているときなどは、同乗者と大声を出さないと会話ができませんでした。

 

いつもオープンにしているわけではないので、トップを閉じているときも音楽が聞こえないのは不満でした。ハードトップのほうが静かでいいなあ、と思っていました。だからロードスターのNDが発売されても、買い替える気にはなりませんでしたが、ハードトップのRFが出た時にデザインが美しく、音楽も聴けるようになるということで買い替えようと思いました。

 

NCからRFになって、オーディオも使いやすくなっていました。ハードディスクにCDの音楽を記録するようなシステムから、USBメモリーの音楽を再生できるようになったので、メモリーにたくさんのアルバムを保存していて、いつでも好きな曲が選べるようにしています。

 

RFにはオプションでBOSEシステムをつけました。BOSEは店舗や車の中など、環境音がうるさい所で音楽を鳴らすとき、いい仕事をするスピーカーだと思います。NCは、それほどオーディオがよくなかったので、あまり音楽を聴かなかったのですが、RFからはよく音楽を聴くようになりました。

 

気づかなかったのですが、BOSEにしてから、車で聴きやすい音楽と聴きづらい音楽があると思うようになりました。

 

クラシックの中で私がよく車の中で聴いているのは、バッハのゴールドベルク変奏曲というピアノのアルバムです。

 

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ピアノ曲はモーツアルトやショパン、ベートーベンも好きですが、車の中で聴くのはほとんどバッハのみ。たまにベートーベンも聴いても、ショパンやモーツアルト、それ以降の新しい作曲家のものは聴きません、というか聴けません。

 

なぜ車ではバッハのピアノ曲しか聴きたくないのか、ちょっと考えてみたら理由がわかりました。

 

バッハは17世紀から18世紀までの音楽家です。この時代はまだ現代のようなピアノはなく、チェンバロ(ハープシコード)という楽器が使われていました。張った弦を鍵盤と連動した部品がはじくことで音を出す楽器です。バッハのピアノ曲は、実はハープシコードで演奏することを前提につくられた曲なのです。

 

ピアノは18世紀後半からハープシコードに変わって普及しました。ピアノは、弦を鍵盤と連動したハンマーで叩いて音を出し共鳴させるという仕組みにより、ハープシコードよりも音の強弱の表現が大幅に出来るようになりました。ピアノは優れた楽器なので、ハープシコードを駆逐してしまいました。つまりバロックの作曲家はハープシコード、それより後の作曲家はピアノでの演奏を前提に作曲されたということです。

 

静かな部屋と違って、車は外部の音や騒音もあり、いいカーオーディオであっても繊細な音は聞き取れません。したがって、繊細な音が出せるピアノ用に作曲した曲より、ハープシコード用に作曲した曲のほうが、全ての音が聞こえて音楽を楽しめる、ということなのです。ショパンの曲を車の運転中に聴くと、聞き取れない音があって、曲を楽しめませんが、バッハの曲は音の強弱をそれほど使っていないので、全ての音が聞き取りやすい。だからバッハのほうが車の中で聴くにはよいのです。

 

同じ理由で、交響曲も車の中では聞けません。部屋の大きなスピーカーで聞こえていた小さい音や繊細な音が聞こえないと、音楽を楽しめないのですね。

 

ロック系であっても車の中で楽しめるアルバムと、そうでないアルバムがあります。その違いは、クラシックと同じく聴き取れる音の違いにあると思います。アルバムのレコーディング技術とミキサーのセンスによって、車の中で楽しめるアルバムとそうでないアルバムの差が出てくるということなんです。自分の静かな部屋で聞いていいアルバムだなあ、と感じても、車の中で聴くとあまりよい曲に聞こえない、っていうものはそこに違いがあるのです。

私が車の中で聴く音楽として、おすすめなのはマドンナのアルバム。大音量にしなくても、曲の大事な部分がしっかり聴き取れますし、音のバランスが絶妙にうまい。1998年の 「Ray of Light」からすごく音がよくなって、2005年の「 CONFESSIONS ON A DANCE FLOOR」では度肝を抜かれました。

 

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マドンナのアルバムは、最高のレコーディング機材と、その時に旬のプロデューサーを起用して、アルバムづくりに他のアーティストよりも金をかけてるんですね。手を入れすぎて、音づくりが人工的といえばそうですが、車内空間で聴くと、他と明らかに出来が違うことがわかります。

 

そういう意味で、車で聴くいいアルバムないかな、と探して見つけたのが、スチュアート・プライスのZootWomanというバンドです。

 

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実は先ほどのマドンナの「 CONFESSIONS ON A DANCE FLOOR」のプロデューサーの一人がスチュアート・プライス。彼のバンドがZootWomanなのです。上の画像の「Things Are What They Used to Be」というアルバムを聴いたら大好きになりました。コレは2009年のアルバムなので、最近の「Redesigned」という自分の曲をリメイクしたベスト盤を買ったら、もうよくてよくて。ヘビロテしすぎて、頭の中で突然リフレインすることが・・・

 

最初聴いたときには、単純な曲のつくりで、退屈そうな印象に思えたのですが、何度か聴いてるうちに中毒になります。

 

私は洋楽ロックが好きで、例えばカサビアンとか、最初聴くとインパクトあって、すげえいい曲!とか思って、何度も聴いてるうちに、すぐお腹いっぱいになることってあります。ところがZootWomanのすごいところは、何度聴いてもお腹がいっぱいにならないところ。聴き飽きるまで、しばらくかかりそうです。

 

お気に入りのアルバムを車で聴いてなんかノリ悪いなあ、と思ったらそれは音のせいということで、いい音の気に入るアルバムを見つけましょう。

 

ちなみにBOSEのシステムはよく出来ていて、オープンでも音楽を楽しめます。でも周囲に迷惑なので、聴けるのは人気のいない道路だけです。