こばるとライダー日記

Soliloquy of a man riding a motorcycle and a convertible

銃と共存する社会

警官が刺されて、銃を強奪されるという事件が吹田市で発生しました。

 

幸いすぐに箕面の山林で犯人は逮捕されたのですが、事件当日と翌日は、銃をもった異常者が近くに潜んでいることに住人は怯えました。学校は休校の連絡がされていましたし、近隣の図書館も閉館されていました。私も近くに住んでいるので、自暴自棄になった犯人が、通勤時に梅田で発砲でもしたらどうしよう、と不安になりました。月末にはG20も予定されているので、警察も必死に捜査したと思います。犯人は逮捕時に拳銃を持っていましたが、拳銃の実装弾のうち、1発は試射していて残り4発が残っていたということです。

 

襲われた警察官は重症なので、手放しでは喜べませんが、まずは犯人が逮捕されてよかったと思います。しかし今回の件であらためて思いました。拳銃一丁と犯罪者一人の存在で、これだけ社会全体が不安になるのだと。そして、アメリカなど銃の所有が許可されている国は、社会がこの不安といつも共存しているのだと。

 

ところが実は日本にも、非合法な銃が10数万丁は存在しているのではないかといわれています。所有者はもちろん反社の組織です。関西はそういう組織の本部がありますから、関西の我々の身の回りに、たくさんの銃が隠されていることでしょう。

 

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まあでも、日本はアメリカと比較すると、銃が使われた事件が圧倒的に少ないです。ですから今回のような事件がなければ、我々は銃の存在を普段忘れていられるのです。

 

対してアメリカでは、銃の発砲事件や事故なんて日常茶飯事です。物騒な地域では、夜道でホールドアップされることも珍しくありません。銃を持っている人間が社会の中にたくさんいることは常識になっていて、銃の危険や不安を人々が認識しながら日々の生活を送っているのです。

 

そういう面を考えると、アメリカ人は日本人よりも精神的にタフなのかもしれません。我々が持っていない感覚や覚悟を持って生活しているのですから。もしかしたら、刀を持ったサムライが闊歩していた昔の日本のような社会なのかもしれません。

  

私は反社関係ではありませんが、昔一度だけ拳銃を撃ったことがあります。もちろん日本ではなくアメリカです。20代の頃に、アメリカ建築見学ツアーというものに参加した時のことでした。

 

ニューヨーク、シカゴ、アリゾナ州のフェニックスを回りました。ニューヨークやシカゴでは、証券取引所などの有名な近代建築をいくつか回って、フェニックスではアーコサンティという砂漠の実験都市を見学しました。

 

 

 

 アーコサンティは印象的でした。イタリアのパオロ・ソレリによって提唱されたアーコロジー(アーキテクチャーとエコロジーの造語)というコンセプトで作られた砂漠の都市です。

 

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フェニックスのホテルで一泊したのですが、夕方に建築ツアーのガイドさんが、「銃を撃ちにいきませんか」と提案してくれましたので、面白そうだと参加してみました。

 

射撃場はホテルから車で10分くらい移動したところにありました。建物は平屋のボーリング場のような施設になっていて、一般人がお金を払って銃のトレーニングをする所です。映画でよく見るように、的となる紙を挟んで、前方の離れた場所まで動かしてから撃ちます。インストラクターが、安全装置などの銃の扱いを教えてくれました。最初はS&W(スミス・アンド・ウェッソン)の銃から撃ったと記憶しています。

 

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本物の銃を持ったのは生まれて初めてでしたので少し興奮しました。銃はズシリと重さを感じました。22口径と38口径、UZIみたいな半自動小銃、44マグナムなどを撃たせてもらいました。

22口径は小さくて軽いこんな形のもの。反動もほとんどなくて少なくて、とても撃ちやすかったです。S&Wのサイトを見たら定価389ドルで売っています。43,500円くらいで安いですね。殺傷能力はありませんが、扱いやすいのでSPが使っているようです。

 

しかし、ひきがねを引いて実弾が発射されたときは、なんともいえない手ごたえを感じました。音と反動と火薬の臭い。ああ、これが本物の銃か、と感慨深いものがありました。そして、バイクや車に乗った時のように、自分の能力が拡大したような錯覚を覚えました。

 

 

44マグナムはもっと手ごたえがありました。でもすごい反動があると思っていたのに、実際はそれほどでもなく、そこそこ上手に的に当たりました。もしかしたら才能があるのかもしれません。

 

 

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日本で合法的に拳銃を撃つためには、警官か自衛官にならないといけませんので、銃を撃った経験は貴重でした。銃を撃つと気分がスカっとして、日本にもこういう施設があったらストレス発散にいいのになあ、と思いました。

 

アメリカ人の中には、銃が嫌いで一生銃を触らない、という価値観の人も少なくありません。社会でいろんな事件や事故が起きていて、心を痛め銃の存在を嫌っている人も多いのです。日本人が旅行で来て銃を撃って無邪気に喜んでいる姿は、そういうアメリカ人から見れば、どう映ったでしょうか。

 

銃が規制され、日々安心して生活できる日本はいい国だと思います。今回のような事件が再び起きないように警察が対応されることを願います。

 

私は中村文則氏の小説が好きなのですが、その中に「銃」という本があります。大学生が偶然銃を拾ってしまうという話です。とてもいい小説ですので、機会があればぜひ。