こばるとライダー日記

Soliloquy of a man riding a motorcycle and a convertible

不測の事態へ対処できないのは、ボーっと生きているからだ

去年の流行語にチコちゃんの「ボーっと生きてんじゃねえよ!」が入ってましたね。

 

NHKの「チコちゃんに叱られる」は、土曜日の朝に再放送していて、時々見ています。チコちゃんが出したクイズに大人が答えられず、キメのセリフで叱られるというスタイルで進行するのですが、楽しく明るい演出で、子供からお年寄りまで見れるよい番組だと思います。

 

チコちゃんがいつも言うとおり、大人になった我々は、ボーっと生きちゃってるような気がします。

 

「時間たつの早いね、一年があっという間」などの会話は、よく口にしますが、やはりボーっと生きているから時間が経つのを早く感じるのであって、時間を長く感じるためには、一日一日を全力で生きてやる事を増やしたらよい、とどこかで読みました。

 

私も、毎日同じ時間に起きて、同じ時間の電車で同じ場所へ出勤し、回ってきた仕事をなんとなくこなして、一日が終わると酒を飲んで寝る、というような生活を繰り返しています。

 

少しでも生活に変化をつけようと、休みの日にはできるだけ出かけて、何か新しいことを発見するようにしたり、写真を撮ったりしていますが、やはりボーっと生きている大人の一人でしょう。

 

とくにボーっと生きている自分を思い知らされるのは、予想外の出来事に対する臨機応変さが、自分になかった時ですね。

 

後で、あれはああいう風に対処しておけばよかったなあ、とよく思って後悔するのですが、いわゆる後の祭りです。やはりボーっと生きてるから、その時にうまく対応できないのだと反省するのです。

 

去年、交通事故を目撃したことがありました。

 

土曜日の夜にバイクで出かけようと思いたちました。お酒を飲まない理由をつくるため、たまに夜中にバイクで走ります。(そういえば、夜に暴走している若者を近年では見かけなくなりました。)

 

その日は神戸のメリケンパークまで行こうと思いました。

 

メリケンパークは、神戸三宮の南にある埠頭の公園です。バイク専用の駐車場もちゃんとあって、深夜でも人が多く不審者にも思われないし、治安もよいのです。空いている夜の二号線をメリケンパークまで走り、夜景などを楽しみました。少し散歩してから、もうそろそろ帰ろうと、大阪に向かってバイクを走らせました。23時くらいになっていました。

 

三宮から少しだけ走ったところで、信号が赤に変わり、横断歩道の前で信号待ちをしていました。道路は広く片側4車線ありました。

 

目の前の長い横断歩道を、右側から黒い服を着た高齢のお婆さんがヨタヨタと歩いてきました。身長が低く、さらに腰が大きく曲がっているので、とても小柄に見えました。カバンも何も持っておらず足元がおぼつかない。

 

私はお婆さんを見ながら、「あー、この人は深夜徘徊のお年寄りやなあ。しかもわざわざ黒い服着て、こういう婆さんが車にはねられるんや。」と考えていました。

 

お婆さんは私の目の前を通り過ぎ、左側の歩道まで辿りつくと、今度は右に曲がって道路の進行方向の横断歩道へ向かいます。私が信号待ちをしている方向なので、その横断歩道の信号も当然赤です。そのまま、赤信号の横断歩道をヨタヨタと歩いていこうとするので、

 

「信号赤やで、お婆ちゃん」と私が心の中で呟いたその時、「どん!」

 

おばあさんは、左からきたタクシーにはねられてしまいました。

 

お婆さんを目でずっと追ってたので、事故の瞬間は見ていました。幸い、タクシーは徐行していたので、おばあさんは激しくはねられた感じではありませんでした。頭も打っていません。最悪の事故ではなさそうです。お婆さんは「イタイ!イタイ!」と大声をあげてます。

 

お婆さんをはねたタクシーは停まっていました。しばらくするとバックをし始めました。後ろに下がって停めて、運転手が降りてくるか、と思っていたら、そのままスルスルスルっとバックし続けて、目の前から見えなくなったのです。

 

「え?どういうこと?」私は、バイクで前に進もうかと一瞬考えましたが、信号がまだ赤なので、動けませんでした。


信号が変わって、お婆さんのところに近寄りました。交通事故では怪我人の保護が最優先と学びましたね。車が来ないよう、周囲の人たちで倒れたおばあさんを囲みました。お婆さんを歩道に移動させようとしましたが、腰を骨折したのか触ると痛がって動けません。その場にいた女性に「タクシーどうしました?」と聞くと「バックして逃げました」とのこと。

 

あのままバックして、50メートル先の交差点で曲がっていったそうです。

 

警察にすぐ連絡しました。救急車もきて、お婆さんは運ばれていきました。交通課の警察官に、事故の状況と逃げたタクシーのことを伝えました。

 

タクシーはバックして逃げたので、はねたことはわかっていたはずです。タクシー会社にばれたら、クビになると思ったのでしょうか。明らかなひき逃げです。私もその場にいた別の女性も、まさかタクシーが逃げるとは思わなかったので、ナンバープレートも会社名のプレートも見ていませんでした。

 

私は機動力のあるバイクに乗っていたのだから、逃げたとわかったときに、すぐにタクシーを追いかけたらよかったなあ、と後で思いました。その時は、お婆さんのことが気になっていたので、現場から離れてタクシーを追いかけるという発想がなかったのです。でも他にも数人その場所にいましたし、その人たちにお婆さんの救護はまかせて、追いかければよかったなあ、と後から何度も思いました。

 

私がタクシーを追いかけたかったのは、ひき逃げの運転手を捕まえたかったのではなく、お婆さんは信号無視をしてたし、黒い服で小さくて見えにくかった、あなたはそれほど悪くないから、逃げたらあかん、余計罪になるから、ということを運転手に伝えたかったのです。事故を起こした運転手に同情したくなるような状況でした。

 

翌日の昼ごろ、ネットのニュースで、あの後しばらくしてタクシーの運転手が逮捕された事を知りました。

 

近所の防犯カメラをチェックすると警察が言っていたので、すぐにタクシー会社も判明したのでしょう。田舎の人通りの少ない場所なら、逃げきれたかもしれません。しかし目撃者もいる街中なのです。周囲にはコンビニが何件もありましたし、なんで逃げたのか。

 

運転手は68歳の高齢ドライバーでした。突然の出来事に気が動転して逃げてしまったのでしょうか。逃げなかったら、それほどたいした罪にならなかったのに。運転手もボーっとしていたのです。ひき逃げ(救護義務違反)についてネットで調べると、35点。免許は失効。あと10年以下の懲役あるいは100万円以下の罰金です。逃げなかったら、運転手が有利になるよう証言してあげたのに。

 

不測の事態になると、ひとは慌ててしまって、思考が停止してしまうのでしょうね。

 

どんな状況でも、あわてずに最善・最適なことが出来る人間になりたいものです。