こばるとライダー日記

Soliloquy of a man riding a motorcycle and a convertible

バイク乗りの禁煙

道の駅にバイクを停めると、他のライダーがタバコを吸っているのをよく見かけます。バイク乗りの喫煙率は平均よりも高いと感じます。バイクに乗り始める動機と、タバコを吸い始める理由が近いからかもしれません。

 

バイクとタバコで共通するイメージは、カッコよさだと思います。

 

バイク乗りにどうしてバイクに乗り始めたの?と聞くと、多くの人がカッコいいからって答えると思います。同じく喫煙者に、なぜタバコを吸い始めたのかと問うてみると、映画やドラマでタバコを吸う俳優を見てカッコいいなあ、と答えるのではないでしょうか。

 

最近のドラマや映画では、青少年に悪影響を与えるということから、喫煙シーンがあまり出ないようになっていますが、昔は、特に昭和のドラマや映画では、喫煙シーンがとても多く、ほとんどの俳優はカッコつけてタバコを吸っていました。

 

バイクに乗っている男らしくてカッコいい俳優、例えば舘ひろしさんも、革ジャンを着て不良っぽくて、煙草を吸う姿や動作もきまっていましたね。ハードボイルドな洋画でも、タバコは男らしさの象徴でした。そういうものに影響されて、ああいう感じになりたい、カッコいい男になりたい、とタバコを吸い始めた男が多かったのです。私もその一人でした。

 

しかし現在は、タバコを吸う姿がカッコいい、という時代ではありません。喫煙者は、世間からすると迷惑な存在、臭いおっさん、哀れなニコチン中毒患者なのです。あのヘビースモーカーだった館ひろしさんも、禁煙して禁煙外来のキャンペーンやるくらいです。

 

私はそうした現実の変化を感じながらも、目を背けて長年の喫煙習慣を続けていました。時々思い出したように禁煙に挑戦して、失敗していました。しかし数年前に本気になって禁煙し、このまま卒煙できると思います。その時に今までと違う禁煙への考え方で成功できたので、これから禁煙する人の参考になればと、まとめておきます。

 

 

まずデータから。JTが出している喫煙率のグラフを転載します。

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驚くべきことに、昭和40年の男性の喫煙率は8割を超えていたのですね。ほとんどの男性が喫煙していました。この時代の男は、ヤニ臭いということは当たり前だったのです。それが平成30年になると喫煙率は20%後半になってます。50年間で喫煙者はそこまで減ったのです。

 

そして特に注目すべきは、20代男性の喫煙率の変化です。昭和時代は、20代男性の喫煙率は、全年齢の中で一番高かったのですが、現在は60代男性の次に低くなっています。つまり、昔は若い人ほどタバコを吸っていたのですが、今は若い人ほどタバコを吸わなくなってきているということです。若い男ほどカッコよさに憧れますが、もはやタバコはかっこいいアイテムではなくなってきていると、データからいえるのではないでしょうか。つまり吸い始めた時の理由なんて、今は無くなってしまったということですね。

 

また、60代男性の喫煙率は、いつも最低です。これはやはり高齢化による肉体の衰えから、呼吸器の疾患やトラブルが多くなり、60代から禁煙する人が増えるということでしょう。健康に長生きするためには、いずれはタバコを止めないといけないのです。

 

喫煙率が下がったのは、タバコの健康被害の認識が浸透してきたこと、タバコ税の値上げ、喫煙できる場所も年々減ってきたことが理由です。昔は飛行機や電車の中でもタバコが吸えました。現在は健康増進法のおかげでオフィスの禁煙、食事をする場所では、禁煙・分煙は当たり前。都市部では路上喫煙さえも出来なくなっています。

 

東京は最も禁煙エリアが徹底されている都市だと思いますが、オリンピックや万博の開催以降は、日本中で喫煙規制がすすみ、タバコを吸える場所は今以上に少なくなるでしょう。タバコ税も数年ごとに上がっています

 

そういう時代の流れと、いつか訪れる自分の高齢化による健康問題に目を向けて、喫煙者はそろそろ発想を変えて、禁煙に取り組んだほうがよいのではないでしょうか。しかし喫煙者にとっての禁煙はとても難しいものです。私も数回禁煙を失敗した経験があります。タバコには依存性があり、禁煙が大きなストレスになるからです。

 

タバコは喫煙者に喜びを与えてくれているという思い込みが強いのです。バイクで走って、道の駅でのタバコは最高に美味しいですね。コーヒーを飲みながらの一服、美味しい食事で満腹した後の一服、仕事が片付いた後での一服、お酒を飲みながらの一服、セックスの後の一服などなど、ほんとうにタバコは美味しくてやめれない。喫煙者は、酒はやめれてもタバコはやめれないな、とか思っているのです。

 

そして喜びの反面、惨めさも与えてくれます。タバコを吸いたいのに喫煙場所が無いときのイライラと惨めな気持ち、自分の口臭や体臭、服の臭いの心配、タバコの値上がりや喫煙規制のニュース、なかなかとまらない咳、健康問題など、多くのストレスを喫煙者は感じなければいけません。

 

禁煙に取り組む理由は人それぞれだと思います。家族のため、健康のため、仕事上の理由、節約のため、いろいろありますが、私の場合は歯の治療のためでした。インプラントの手術前に、歯周病治療を数ヶ月行いましたが、その流れで禁煙できたので、禁煙したい方は、歯の治療と並行することをおすすめします。

 

そして、タバコをやめるためには、タバコのデメリットよりも、何故タバコに依存してしまうのか、その仕組みを理解することも大事だと私は思います。タバコの害、ガンのリスクがあるとか、受動喫煙とか、COPDの話、経済的な視点などで動機付けするより、なぜタバコに依存しているか、なぜやめられないか、その理屈について知る事のほうが効果的であると思います。タバコを吸う必要性は全くない、という事実を自分の心にしっかりと植え付けることで、タバコを吸いたいという欲求を少なくできるのです。

 

私が理解しているタバコ依存の仕組みを描きます。

 

全ての動物には、脳に報酬回路というものが存在します。報酬回路とは、ご飯を食べたり、セックスしたりすると、脳内にドーパミンなどの快楽物質が出て、おいしいとか気持ちいいとか、脳内で快楽物質が出る働きです。

 

動物の行動は、快と不快によって動機付けされています。気持ちよくて幸せなことは、癖になって何度もしたくなり、不快なことは二度としたくない、ということです。その心地良さというのは、脳内の信号であり、快楽物質がその信号を左右しています。そういう快楽物質と信号の仕組みが報酬回路で、食事をして生命を維持したり、生殖行為をして子孫を残すのは、報酬回路が働いているからなのです。

 

タバコのに含まれるニコチンは、この報酬回路に巧妙に作用する物質です。ニコチンは肺から血管に入り、数秒で脳に影響を与えます。実は、ニコチン自体は快楽物質ではありません。特殊なニコチンの作用により、快楽物質であるかのような錯覚を与えているのです。

 

ニコチンを摂取し続けると、快楽物質の受容体がニコチンによって蓋をされるようになります。そして快楽物質自体も減ってきます。心地よさを感じる度合い、快楽の信号が減少するようになるのです。そしてニコチンが体に入ったときに、不足していた快楽信号が満たされるようになります。

 

もう少しわかりやすく説明します。食事をしたときは快楽物質が出て美味しいなあ、と幸せになります。非喫煙者が出す快楽物質と信号を100%とすると、喫煙者は報酬回路がおかしくなっているため、信号が半分ほどしか出ません。そして食後にタバコを吸うと、本来出るはずであった残り半分の快楽信号が、ニコチンによって出たかのような感覚になるのです。

 

喫煙者は「あー食後のタバコはやっぱりうまいなあ!」といって喜んでいますが、実は非喫煙者であれば普通に出たはずの脳内の快楽信号が、タバコを吸って後から遅れて出ているだけなのです。しかし、タバコを吸うタイミングで快楽信号が出てくるので、タバコを吸うと気分が良くなると脳が勘違いをしているのです。そしてタバコを吸わない間は、快楽物質が制限されているため、どことなくイライラしてしまいます。禁煙するとご飯が美味しく感じるようになるのは、快楽物質と快楽信号が正常にもどるからなのです。

 

思い出してください。最初にタバコを吸ったとき、不味くなかったでしょうか?タバコは慣れてからおいしく感じるようになりましたね。タバコが快楽物質であったら、最初に吸ったときから美味しく感じているはずです。タバコに慣れてきて、次第に脳が美味しいと感じるようになります。何度もタバコを吸っているうちに、快楽物質の出る量が減り、ニコチンが信号を出すきっかけになるだけなのですね。

 

タバコを吸いたくなるときはいつでしょうか。食事、コーヒー、飲酒、セックス、仕事の完了などじゃないでしょうか。何か快楽物質が出るはずの行為をした後に、タバコを吸いたくなるのです。本当は出ていたはずの快楽物質が止まっているので、タバコで出しているんです。

 

タバコを吸わない人は、タバコが吸えなくてイライラはしません。喫煙者は、タバコによって快楽物質の蛇口が閉まってイライラしているだけ。

 

これがニコチン依存の仕組みです。

 

私もニコチン依存がどのように起こるのか、よくわかっていませんでした。タバコが招く依存性の仕組みは、欧米では常識になっていて、タバコ会社も理解しています。コチンは人間が持っている報酬回路の仕組みを崩して、ニコチンが快楽物質であるかのような錯覚を起こさせているだけで、ニコチンに快楽物質の成分がないのです。タバコは本来人間にとって不必要なもので、タバコ産業は喫煙者から金銭を集めるための巧妙な詐欺ともいえるでしょう。私の下手な文章でご理解いただけれなかった方は、ぜひネットで情報を集めてみてください。ニコチン依存なんて馬鹿みたいな仕組みなんです。

 

私は以上のような依存症の理解と歯の治療期間で、苦しい禁煙期間を乗り切ることができました。ほぼ3ヶ月間の禁煙で、タバコがおかしくしていた脳内の報酬回路は復元し、一年ほどで依存症から脱却できます。

 

しかし喫煙者にとって禁煙というのはとても苦しい戦いです。それは動物の生命維持や生殖という本能と深い関わりのある脳のシステムが関係しているからです。報酬回路は、動物であれば生まれたときから持っています。腹がすけば不安になり、満腹になれば安心します。欲求が満たされれば満足することを、誰に教わるわけでもなく生まれつき持っているのです。そして大人になっても本質的なところでは変わっていません。

 

依存症は、報酬回路のバランスが崩れ、快楽物質に支配された状態です。ドラッグやアルコールの依存症、メンヘラのリストカット、セックス依存、ギャンブル依存、仕事中毒、痴漢などの犯罪行為、など、本人が理性でやめたいと思っているのにやめられないのは、結局は快楽物質に依存しているのです。

 

しかし、動物の中で人間だけが、本能そして報酬回路に反する行動が出来るのです。依存症は必ず克服できます。
 

私も人生でタバコにたくさんのお金と時間を使ってしまいました。もう過ぎたことですし、いろんな状況で、タバコが私の人生を演出してくれましたから、思い出として後悔はありません。それよりこれから先にタバコを吸わなくてすむので、将来が明るくなりました。人間は何歳になっても明るい未来というものは必要です。