こばるとライダー日記

Soliloquy of a man riding a motorcycle and a convertible

SCR950というバイク(2)

前回からの続きです。

 

CB400SBから乗り換える次のバイクは、後悔しないようにしたいと思っていました。お金を無駄にしたくないというのはもちろん、勘違いはバイクに対して失礼だと思うのです。縁があって自分の相棒となったバイクとは長く付き合いたいです。

 

CB400を窮屈に感じていた私は、まず身長があっても乗りやすいバイクにしたいと思っていました。まず思いつくのは、デュアルパーパスというセグメントです。オフロードの車体にロードスポーツのタイヤをとりつけたバイクは、BMWのGSシリーズがヒットしてから、ホンダ、ヤマハ、スズキと各社市場投入し、選択肢が増えてきていました。休日にちょっと遠乗りして、そこで山林のわき道も走るという乗り方は、山の多い日本の地形にあっているのではないかと思います。特にBMWは大柄な自分の体格にもあってるように思いました。

  

しかし、いろいろ試乗もしてみたのですが、なんとなく乗り換える踏ん切りがつかず、悶々としていました。何かがひっかかって購入にふみきれません。最後はヤマハのMT-09トレーサーに決めかけましたが、やはり決断できませんでした。

 

なんとなくその理由が何なのかはわかっていました。それはバイクのデザインです。CBを乗っていて、樹脂の外装部品が多いデザインが嫌になっていました。最初はカッコいいと思っていたデザインでしたが、樹脂の外装パーツでスタイリングが装飾されているバイクをいいと思わなくなってきていたのです。

 

多少古臭くみえても、トライアンフやヤマハのSR、カワサキのW800のようなデザインがいいなあ、と思うようになっていました。それに高速では楽になるカウルも、もともとバイクは風を感じるために乗るものだからいらない、と思うようになっていました。風が嫌だったら車に乗ればよいのです。

 

検討しているうちに、「見た目のデザイン」という4つ目の条件が追加されました。

 

そしてその4つの条件を満たすバイクが登場したのです。それがSCR950でした。

 

まず見た目のかっこよさはストライクでした。外装のプラスチッキーなところはなくて、またレトロすぎでもなく、バイクとしての存在感があります。さすがデザインにすぐれたヤマハです。ヤマハのプロダクトは、機能美と装飾のバランスがいい具合なんですね。またスクランブラーという商品コンセプトも気に入りました。

 

スクランブラーというジャンルを知ったのもSCR950に出会ってからです。オフロードにロードスポーツのタイヤをつけたデュアルパーパスとは逆に、ロードスポーツのバイクにオフロードのタイヤをつけて、悪路走行性を向上させるというコンセプトは、オフロードバイクというジャンルが存在しなかった頃に、ダートレースのために生まれたバイクなのだそうで、ドカティのスクランブラーがヒットしたこともあって、ヤマハもボルトをベースに作ったのでしょう。

 

山道を走るときにロードスポーツのタイヤは不安です。アスファルトの接地をよくするタイヤも、悪路では役に立ちません。オフロードのタイヤのほうが安心感があります。

 

エンジンについてもSCRに対する期待が沸きました。SCRのベースとなったボルトは、ハーレーを意識して作られた車種です。空冷Vツイン2気筒のエンジンは、低回転で粘り強いトルクがあり、しかもドコドコ感が心地よい。対ハーレーで作られたこともあり、エンジンに格段の安定感があると思います。たまたまなのかもしれませんが、ハーレーを試乗時、低速でコーナリングするとき、エンジンが低回転でエンストするんじゃないかという不安をエンジンに感じることがありました。まあそれが味だよってハーレー乗りの人は思っているのだとは思いますが。一方ヤマハのボルトに試乗したときには、そのように不安に感じるところが無く、スムーズな加速感と空冷の大雑把感が、うまくハーモナイズしている、いいエンジンだと感じました。

 

アメリカでは、日本のようなハーレー信仰がないので、ボルトはそこそこに売れているのではないかと思います。ただ車体が窮屈なので、大柄な体格でも楽して乗れるようにカスタムとしてのSCR950を誰かが考えたのでしょう。

 

ということで、ずっと構えて待っているグローブにボールがスパーンと投げ込まれました。もうこれは買うしかないな、と思い、日本でSCRのホームページが出来た直後に、後悔したくない、とか言ってたのに、試乗もしたこともない、現物も見たことが無い状態で、バイク屋に行って注文したのでした。カタログは注文後にもらいました。

 

幸いCB400の下取りも思ったより高くついて、割引も少ししてもらって、追い金はそれほどかかりませんでした。ただ、一度も乗ったことがないバイクを果たして自分は乗りこなせるのだろうか、という不安を感じながら納車を待つことになりました。大型免許は教習所でとっていましたが、大型バイクの所有はSCR950が初めてでしたので、CBから排気量が倍、重さ50キロアップということがどういうことなのか、期待と不安が交錯したのでした。

 

 

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