こばるとライダー日記

Soliloquy of a man riding a motorcycle and a convertible

飲酒は毎日同じ飯を食べるのと同じ

 

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「Aクン。ちょっといいかな。少し話しをしたいんだけど。」

 

「はい。Bさん。なんでしょうか。」

 

「君の最近の生活習慣と勤務態度についてのことなんだ。他の人も気づいてるんだけど、君は朝お酒くさいことが多いよ。たぶん毎日遅くまで酒を飲んでるんじゃないかな。午前中だるそうにしているときもあるし、仕事に影響しているような気がする。プライベートの過ごし方に口を出すつもりはないんだけど、君のお酒の飲み方は、あらためたほうがいいと思うんだ。」

 

「申し訳ありません。最近ストレスでいらいらして、夜にお酒を飲むのが習慣になっているんです。つい飲みすぎてしまっています。一応は11時に飲むのをやめているのですが、強い酒を飲んで、朝残っているようです。」

 

「まあ、ボクも若い頃、酒に浸ってた時期があったから偉そうにはいえないんだけども。ただ、昔は社会がお酒に対して寛容だったからね。でも今ってさ、そういう時代じゃないだろ。君は内勤だから問題にならないけど、外回りなら大問題だよ。すぐにSNSで炎上して会社のイメージ悪くなるからね。週末に飲むのはかまわない。だけど君や昔のボクみたいに飲酒が習慣化して、毎晩飲むようになるのはよくないよ。習慣を変えたほうがいいと思う。」


「わかりました。参考までに教えていただきたいのですが、Bさんはどうやって飲む量を減らしたんですか?やはり健康を気にしてですか?」

 

「まあそれもあるけどさ、酒のマイナス面を考えるのではなく、メリットについて考えるようにしたんだ。酒のマイナス面はいろいろあるよね。ついつい飲みすぎて仕事に影響が出てしまったり、肝臓や胃を悪くしたりするかもしれない。外で飲むようになると、酔っ払ってトラブルになったり、金もかかる。バブルの頃は一晩で10万以上飲み代に使うのは普通だったよ。酔っぱらって喧嘩して警察の世話になったこともある。もちろん次の日は激しく後悔した。今まで酒に使った金で、家が1軒くらい建ってるんじゃないかなあ。


でもさ、そういうマイナス面を、酒をやめる動機に変えるのは難しいんだよ。自分でもよくないと思ってやってしまうことは他にもいろいろあるよね。そういうことは、結局それ以上にいいことがある、と思い込んでいるからなんだ。それがたいしたことではない、と理解することが何かをやめる動機になるのさ。」

 

「そうなんですか?もっと詳しく教えていただけますか。」

 

「酒を飲むのは、報酬回路の前借り行為ということさ。」

 

「前借り?報酬回路?どういう意味なんでしょうか。」

 

「人が気持ちいいなー、って快楽を感じるときは、神経物質が脳内に溢れて、神経の受容体に快楽信号を与えている状態なんだ。空腹でご飯食べたり、気持ちのいい運動をしたり、肉体に良いことがあったりすると、そういう脳の神経の仕組みが働いてハッピーな気分になるんだよ。それを報酬回路っていうんだ。LSDとかのドラッグは、その回路を人工的に操作する薬物、つまり快楽信号を出すスイッチのようなものと考えていい。お酒のアルコールも、同じように一種のドラッグなんだよ。アルコールという液体に快楽物質は入っていないんだよね。報酬回路に作用するだけ。」

 

「それで気持ちよくなる物質を不自然に出させるものだから、後で物質が不足してしまう。飲みすぎると後で不快だろ?金借りて楽しいことして、後で金欠になるようなもんだ。」

 

「ビールもワインもウイスキーも、いろいろ味は違うけど、根っこはアルコールというドラッグであるということは一緒なんだ。アルコールが大人のたしなみであるとかさ、味を楽しむとか、ワインの味がわかる人が文化性が高いとか、好感度の高いタレントを使ったCM流したり、パッケージデザインやブランド戦略にのせられて、みんな金出してるけど、単純に言うと合法的なドラッグを消費者に売りつけるマーケティングなんだよ。」

 

「ほら昔のタバコがそうじゃないか。マルボロが大人の象徴とかさ、昔は映画俳優がかっこつけて吸ってたけど、今はタバコ吸うほうがかっこ悪いよね。アルコールも同じさ。飲むのをやめると飲酒行為は滑稽に思える。」

 

「まあ、そういうこととは別に、ボクが酒をやめたのは、生まれた以上は幸せに生きたいと強く思うようになったからかな。幸せっていうのは、つきつめると気持よさを継続する事。つまり報酬回路の快楽物質をいかに出して、その状態を持続するかっていうことにつきるから。酒は確かにいい気分になるための手軽な手段だけどさ、他にもいろんなやり方があるんだから、それを試してみないと、なんか人生もったいないじゃないか。」

 

「いろんな美味い飯が世の中にあるのに、めんどくさいし美味いからって毎日同じ味の飯ばかり食って人生終わるのは、つまらないな。ボクにとって酒は、それと同じであることに気づいたんだよ。」


「・・・・・そういう考え方は初めて知りました。でもまだよくわからないです。酒飲むと、簡単にリラックスできますし。疲れがとれるような気がします。Bさんにとって酒に変わる気持ちのいいものって何ですか?」

 

「それは人によって違うし、ボクの人生の楽しみ方を教えても君の参考にはならないよ。君だけの人生なんだから、人から教えてもらうのではなくて、君自身で探さないとね。大人になるということは、人生の楽しみ方を自分で見つけることでもあるんだよ。酒なんかよりもドーパミンが、ドバドバでることっていっぱいあるよ。一度きりの人生を目一杯楽しまなきゃ損だよ。仕事はそのうちのひとつだよ。」

 

「もしかしたらコレですか?(笑)」

 

「おいおい、人聞き悪い。でもそれも確かにひとつではある (笑) とにかく人生の楽しみを酒に頼るなということさ。ぼやぼやしていると人生はあっという間に終わるぞ。」