若い頃にバイクに乗っていた、あるいは古いバイクに乗っていた人であれば、バイクの押しがけというものをやったことがある人は多いと思います。
私も学生時代に乗っていたバイクのバッテリーがあがった時、よく押しがけをしていました。「キックペダルでかかりにくいから押しがけしてみよう」てな感じで、ごく普通のことでした。
バッテリーが古くなっているのはわかっていましたが、貧乏だったこともあり、新しいのを買うという発想がなくて、エンジンのかかりが悪いバイクは押しがけ、と思ってました。
これは私だけでなく、古いバイクを乗っている周囲の友人たちも、同じような認識でした。
若い時のそういう経験があったので、社会人になって買ったCB400SBで、初めてバッテリーがあがっときも押しがけを試みました。場所がちょうど坂の上だったので、下りながらエンジンをかけられると思い、坂道を利用してかなりの距離を走らせたのに、エンジンは全くかかりませんでした。結局JAFを呼んで助けてもらい、担当のお兄さんに、セルモーターのバイクは押しがけができないんですよ、と教えてもらいました。
それからしばらくしてから、BMWのバイクに乗っているオヤジ仲間とツーリングに行くことになり、BMWのエンジンが出発時にかからなったことがありました。その時に同行していたツーリング仲間と、みんなで押しがけを試みたのですが、エンジンはかかりません。その時もJAFを呼んで助けてもらい、BMWの人はエンジンを切るのが怖くなって、一人で帰ることになりました。
古いバイクを乗っていた人は、バイクは押しがけできるもの、と思い込んでいる人が多いのですが、構造的に最近のバイクは出来ないということを知っておいたほうがよいです。
昔のキャブレターのバイクは構造がシンプルで、ライダーがバイクを押すことで、セルモーターの代わりができるようになっています。現在主流のインジェクション車は、ガソリンを電磁ポンプでインジェクターに圧送する仕組みになっていて、バッテリーが上がると、電磁ポンプが稼働しなくなります。少しバッテリーが残っていて、弱弱しくモーターが動いたとしても、規定電圧以下になるとECUへの電源供給がされず、またエンジンのクランクが既定回転数以上にならないと、燃料噴射や点火が行われないので、エンジンがかかりません。押しがけしても、ガソリンが送られず、ECUが作動しないので、エンジンはかからないのです。
最近乗り始めた人は、SR400の中古とかでなかれば、キャブ車に乗る人は少ないと思うので、押しがけをするような人はもう少ないと思うのですが、古いキャブ車を大事に乗っているオヤジライダーは、最近のバイクの構造も知っておいたほうがよいでしょうね。
バイクのバッテリーあがり対策としては、とにかく古いバッテリーや、一度でもバッテリーがあがったものは交換するのが一番です。またバッテリーが不安だけども、ツーリングに行かないといけない場合は、ケーブルを持っていると安心ですね。
ソロで走りに行くライダーであれば、何らかのロードサービスを受けられるようにしておくか、予備のバッテリーやスターターを持っていくと安心です。