よくツーリングで走っている猪名川沿いから脇道にそれたところに、多田銀銅山の記念館があるので、寄ってみました。
最近、蒲池明弘氏の「邪馬台国は「朱の王国」だった 」という 新書 を読んで、関西の鉱山について興味がわいているからです。
この本の著者は、古代史を水銀をつくる原料である辰砂の採掘という視点から分析しています。邪馬台国から奈良時代（２世紀～８世紀）において、辰砂という鉱物は重要な資源であり、権力構造や経済、政治、宗教に大きな影響を与えたそうです。
これはここ数年古代史に興味があった私が、全く知らなかった視点でしたので、とても新鮮に感じました。また内容として説得力がある本でした。
辰砂（しんしゃ）は硫化水銀からなる鉱物です。日本では古来「丹（に）」と呼ばれました。別名に賢者の石、赤色硫化水銀、丹砂、朱砂などともいわれています。
辰砂は赤色（朱）の原料であり、防腐剤や防虫剤として利用され、また加熱して硫黄を分離すれば水銀を抽出することができます。水銀は不老不死の薬とされ（実際は水銀中毒で死にますが)ていたそうです。また金メッキする時の触媒としても使われていたとか。
中国へも輸出していたというのですから、辰砂の鉱山とそれの加工技術を持った一族というのは富を手に入れていたのです。
その辰砂の鉱脈は、伊勢国丹生（現在の三重県多気町）、大和水銀鉱山（奈良県宇陀市菟田野町）、吉野川上流、四国、九州にかけて広がっています。
日本書記の神武天皇の一節に以下のような文章があります。
宇陀川うだがわの朝原で、ちょうど水沫のように固まり着くところがあった。
天皇はまた神意を占い、
「私は今、沢山の平瓦で水なしに飴を造ろう。もし飴ができればきっと武器を使わないで、天下を居ながらに平げるだろう」と言われた。
飴造りをされると、たやすく飴はできた。そしてまた神意を占って言われた。
「私は今、御神酒瓮おみさかめを、丹生(にふ)の川に沈めよう。 もし魚が大小となく全部酔って流れるのが、ちょうど槇の葉のように浮き流れるようであれば、 私はきっとこの国を平定するだろう。もしそうでなければ、事を成し遂げられぬだろう」
そして瓮を川に沈めた。するとそのロが下に向いた。しばらくすると、魚は皆浮き上がってロをパクパク開いた。
この文章は水銀のことが書かれているという説があるそうです。なるほど。
記念館の前にバイクを停める場所があります。
中には年表が貼られていました。古くは奈良時代から発掘されていたようです。
展示場はこんな感じになってました。鉱石や採掘の資料があって、とても勉強になりました。
そのうち生野銀山にも行ってみようかと思います。昔二度ほど行ったことがありますが、坑道を探検するのが目的で、歴史的な資料はほとんど見ていません。今度行ったら資料館のほうもゆっくり見学したいと思います。
